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【書評】上阪徹『社長の「まわり」の仕事術』

  • 社長ではなく、直接的に事業を動かす「まわり」の人にフォーカスを当てたインタビュー集。実際のところ、世の中には社長の数よりもその「まわり」の人の数の方が多いわけで、共感できるポイントや参考になる点も多いのではないか。自分自身もまさにそのポジションなので、かなり引きつけて読むことができた。


社長の「まわり」の仕事術 しごとのわ

社長の「まわり」の仕事術 しごとのわ

  • 作者:上阪 徹
  • 出版社/メーカー: インプレス
  • 発売日: 2017/11/13
  • メディア: Kindle版

トップを孤立させないコミュニケーション術


隈研吾氏の建築事務所やDeNA南場氏、カルビー社長の松本氏(当時)などが登場する。本書を読むと、ほぼすべての社長が常に目まぐるしく色んなことを考え、決断やレスポンスが異様に速いという共通点が見えてくる。


アイデアがイメージで出てくるので、言葉だけだと全然疎通が出来ない、という話はめちゃくちゃ共感したポイントで、弊社代表には創業期からWindowsのペイントを多用してもらうことで意思疎通を試みている(笑)。


社長の指示が単なる「無茶振り」で終わるかどうかは、ある意味では受け手側の能力の問題でもある。社長直属ではたらく人たちはみな、トップの思考を理解するための工夫をたくさんしていることが分かる。資料は極力1枚の絵に落とし込む、スケジュールを事前確認のうえ報告を入れるタイミングを図る、等々。周囲からはそれが一見イエスマンの行動に映ることもある、というのも分かりみが深い。

経営ビジョンの効能

他方で、社長がやるべき仕事のひとつとしてビジョンや企業理念の発信が挙げられるだろう。これもまた実感値込みだが、直接コミュニケーションする人たちですらトップの世界観や視野を共有することに試行錯誤が必要で、それ自体翻訳コストがめちゃくちゃ高い仕事である。同じことを組織に関わるメンバー全員が当然できるわけがないし、やるべきでもない。コミュニケーションコストを節約するための共通言語が必須であり、それがシンプルに落とし込まれた言葉=ビジョンなのだろう。


中川政七商店の食器


本書のエピソードの中でも特に、中川政七商店の話が非常に刺激的だった。すっかり会社やブランドのファンになってしまい、出掛けたついでに早速お店ものぞいてきた。社長・中川氏の著作もいくつか購入。ブランド広報やリクルーティングにもきっとポジティブな効果があるだろう一冊だ。

本書で登場する人々

カルビー株式会社 代表取締役会長 兼 CEO 松本晃氏
まわりの人:藤原かおり氏(フルグラ事業本部)、笙啓英氏(海外事業本部)


株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役会長 南場智子氏
まわりの人:中井雄一郎氏(会長室)


株式会社ストライプインターナショナル 代表取締役社長 石川康晴氏
まわりの人:篠永奈緒美氏(「koe」事業部)、中村雅美氏(宣伝部)、岡田康治氏(文化企画部)


株式会社隈研吾建築都市設計事務所 主宰 隈研吾氏
まわりの人:横尾実氏(代表取締役)、稲葉麻里子氏(コミュニケーション・ディレクター)


株式会社中川政七商店 代表取締役社長 中川政七氏
まわりの人:細萱久美氏(バイヤー)、渡瀬聡志氏(デザイナー)、緒方恵氏(デジタルコミュニケーション部)


株式会社サニーサイドアップ 代表取締役社長 次原悦子氏
まわりの人:谷村江美氏(社長室)、松本理永氏(バイスプレジデント)

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